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Kalraの怪談

第25章 二十五夜目:招く海

「それって自殺ってこと?」
Bが話に入ってきた。中居さんはBに向き直り、首を振る。
「ええ、そう思われていました。でも、遺書も何もない。それに、友人と旅行に来ていたり、家族と来ていたりと、とてもじゃないけど自殺しそうな人ではないんです。自殺する人って、だいたい一人で宿泊されますからね。」
それはそうだ。死にに来るのに、団体旅行で来るというのは想像しにくい。

それに、と更に続ける。
「夜中にフラフラと浴衣のまま海に向かって、ずんずんと海に入っていく人影を見たっていう話も地元じゃちらほら聞きますよ」
「夜の海に呼ばれたってこと?何か船幽霊的なものでもいるのかな?」
ははは、と、中居さんは明るく笑う。
「まあ、そういうものがいるのかもしれませんね。ちなみに船幽霊っていうのは、船に乗っていると遭遇するやつですよね。柄杓を貸してくれーって来る」
中居さんは両手を垂らしてお化けのジェスチャーをしてみせる。明るい人だ。
怪談話自体はこれで終わりだった。

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