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Kalraの怪談

第26章 二十六夜目:水子供養

【水子供養】

A子とB子は大学生のときからの親友で、二人とも旅が好きだった。なので、大学で友だちになって以来ずっと、年に数回旅行計画しては二人して行っていたのである。

しかし、そんな二人もすでに28歳。本来なら、女性同士ではなく、彼氏とでも旅行に行っていい年なのだが、女同士の気安さから相変わらずの女二人旅を楽しんでいた。

今回は、S県の温泉宿に来ていた。レンタカーを借りて、周囲を観光したり、ちょっと足を伸ばして日帰りスキーをしたりして楽しんでいた。その日は今回の旅程の最後の日であり、山道をドライブしていた。

このとき、ふとA子が道端に鄙びた寺を見つけた。A子は大学でも日本文化と日本史を専攻しており、こういった日本古来の建造物に興味があり、寄っていこうと主張する。特に名のある寺というわけでもなく、正直B子は興味はなかったが、A子が強硬に行こうと言うのでついていくことにした。

道路から急峻に立ち上がる山道を抜けると、森に囲まれた古いお堂が見えてきた。お堂の周囲には小さな地蔵がたくさんあった。お堂の名称は寺額がもうかすれていて読めなかったが、寺の周囲に掲げられた上りには、かろうじて「水子供養」とあるのが読み取れた。

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