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自殺紳士

第2章 Vol.2:理由のない命

森の空気が心地よい。
 こんな感覚も、私は忘れていた。

私は何故か泣きそうになった。
 
「私、多分、まだまだ歩き続けると思うんですよね。
 もし、また死にたくなったら、あなたのもとにも行くと思います。
 死なないでください。」

青年は笑った。
 私の擦り切れた心に、水のように染み込む言葉だった。

「わかったよ。死なない。」
私が言うと、青年は嬉しそうにした。

「さあ、そうと決まれば、飯でも喰おう」
私は青年を誘った。
 青年は、「金が無い」と言う。

神様は金までは工面してくれないらしい。

ーまあ、死んでるので、腹も減らないし、疲れません。
 ついでに言えば、眠ることも、風呂に入ることも必要ではないみたいです。

それでも、飯は喰えるのだろう、奢るから
と、青年を神社近くに一軒だけ会った定食屋に連れて行った。

飯を喰い、私たちは駅で別れることとなった。
私は青年に名を尋ねた。

ー名前は忘れてしまいました。
 それに、私に会った人は、自殺を思いとどまって、私と別れると
 私のことは忘れてしまうようです。
 神様がそうされたようです。

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