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自殺紳士

第3章 Vol.3:9歳の少年

【9歳の少年】

世界は狂っていた

ボクが狂っていないのであれば
 狂っているのは世界だ

生まれたときから
 ずっとつま先立ちで歩いていた
背伸びをし続けることを要求される
 3歳で受験をした
 お母さんが言うには有名な幼稚園らしい

ソコに入れば、有名な小学校に行かれる
 有名な小学校から有名な中学校に入ることが大事だった

幼稚園の頃から「ジュク」に行っている
 「ナライゴト」もたくさんだった
ナライゴトは楽しいときもあったけれど、
 受験が終われば、また別の「ヒツヨウ」な「ナライゴト」が始まった

自分が今できる以上がいつも目標だった
 お父さんはいつも言う
 「自分に勝たなければダメだ」
って

一体誰と競争しているかわからないままに
 ボクはつま先立ちの全力疾走をしていた

朝はいつも眠たかった
 ゆっくりした記憶はなかった
  自分ができているのかすらわからなかった

できないのは、努力が足りないからだった
 点数がすぐに出るので、
  努力がたりないことはすぐに見て取れた

努力、努力、努力

友達にはもっとデキる子がたくさんいる
 お母さんは、言葉の端々で、その子とボクを比べた

ボクはいつも努力が足りなかったのだ

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