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自殺紳士

第3章 Vol.3:9歳の少年

男の人はゆっくりとしゃがんで
 ボクの顔を見つめた

「どうしようかね」

ボクは、ちょっと意味がわからなかった
 どうしよう、って?
しばらく考えてから、ああそうか
と思った

この人は、ボクの意見を聞いているんだ

ボクは・・・
 言おうとして、ボクは全然言いたいことが浮かばないことに気がついた

なんだか、ボクの意見を聞かれたのって
 初めてな気がする

いつも、聞かれていたのは「セイカイ」ばかりだった
 この問題のセイカイは?
 この質問へのセイカイは?

でも、この男の人は
 ボクのことを聞きたがったのだ

そして、ボクの気持ちだったら
 なんでも正解だった

そんなことは初めてだった

ちょっと長い時間考えて、
 ボクはやっと自分の気持ちが分かった

「ぼくは、授業も塾もないところに行きたい
  ちょっと、お休みしたいんだ」

男の人はにっこり笑った

「そうか、じゃあ、ぼくは君を誘拐しちゃおうかな」

ぼくはちょっと驚いたけど、うん、と頷いたと思う

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