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自殺紳士

第3章 Vol.3:9歳の少年

ぼくは10日ぶりに家に戻った。
 お父さんやお母さんは警察にも連絡して、ぼくのことを探していたらしい。

男の人がぼくを連れてきた時、警察の人が男の人を捕まえようとした。
男の人は何も言わずに捕まった。

ぼくは心配になって、男の人を見たけれど、
 男の人はゆっくりと笑っていた

お父さんとお母さんはぼくを抱きしめて、涙を流している。
ぼくは少し深呼吸して
 こう言った
「お父さん、お母さん
  ごめんなさい。でも、そのお兄さんは悪くないんだ
  ぼくが自分でここを離れたんだ
 ぼくは、ちょっと疲れちゃったんだ・・・」

お父さんやお母さんに、こんなに長く自分の言葉で話したことが在っただろうか
 お父さんもお母さんもとても驚いているようだった

そして、また、ぼくを黙って抱きしめてくれた

男の人は警察官に連れられていったのだけど
 不思議なことに、その後、だれも、男の人のことは口にしなかった

みんな、あの人のことを忘れてしまったようだった

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