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自殺紳士

第5章 Vol.5:底辺の人

その後、男と僕は近くの公園に行き、
一緒にベンチに座った

男は僕に話すように言う

『何か力になれるかもしれないから』と

僕は、自分の生い立ちを話した
 自分が感じていることを話した
 そして、
 自分の絶望を話した
何かをすれば
 誰かが僕の話を聞いてくれるのではないか
何かをすれば
 少なくとも、誰かが僕を見てくれるのではないか
 僕が 存在したことを知ってくれるのではないかと

男は僕の話を聞いた
 僕は、なんだか久しぶりに人と話をしたように思った

こんな事があって、男は僕としばらく行動をともにした
男は金をたくさん持っているわけでもないし、
何か特別な縁故があったりするわけでもない
素晴らしい知識や技術をおしえてくれたりもしない

ただ、一緒にいて
どうにかして生活をうまくいかせるようにしましょうよ、とか、
人に聞いてみましょうよとか、
なんだか、そんな平凡なアドバイスをするだけだった

結構、時間はかかったけど、
僕は市の制度を使って、職業訓練を受けることが
できることになった

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