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自殺紳士

第6章 Vol.6:花火大会の夜

【花火大会の夜】

打ち上げ花火が上がる
オレンジや赤の光が一瞬、夜空を照らす

その光に女性の顔が照らされた

まだ20代中頃
薄い化粧をしている
髪を丁寧に結い上げ
浅葱色の浴衣を着ていた

女性が花火を見上げるビルの屋上には
その女性と
男性が一人

男性は、黒色のスーツにかろうじて黒ではない濃紺のネクタイを締めていた
花火大会を見る服装としては
違和感があると言わざるを得ない

女性は男性に気づいていたが
あえて何も言わなかった

男性は、花火に照らされる女性の横顔をじっと眺めていた

「花火、見に来たんじゃないんですか?」
男性の方に目もやらず
女性はそう言った

「もう少しで終わりですよ」
「毎年見ていたからわかっているんです」
女性は続けた

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