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自殺紳士

第6章 Vol.6:花火大会の夜

「来ないでください」
女性は中空を見上げたまま声を上げる

「今年も一緒に来るはずだったんです」
「この着物、彼が選んでくれたんですよ」
「嬉しかったんだ。初めて彼氏ができて、花火を見に来て。
 次の年も、次の年も・・・」
「なのに・・・」

「今年は、この何処かで、私の親友と花火を見ているんです」
「別れてくれって・・・
 なんで・・・?
 なんで、私、あの子と彼を会わせちゃったの?」

女性は、空に向かって笑った
嘲るように・・・泣くように、
笑っていた
 「私、心が壊れちゃいました」

女性は腰を掛けた姿勢で、男性を見る
男性は、慎重に、女性ににじり寄っていた

「あなたがなんでここにいて、私に話しかけたのかわかりませんけど
 最期に、人と話せて良かったです」

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