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自殺紳士

第6章 Vol.6:花火大会の夜

連続する爆発音
 夜空に大輪の花が幾重にも咲く
この花火大会のフィナーレだった

「さようなら」
ふっと、女性が手を離す

「待って!」
男性は寸でのところで女性の手を掴んだ

「離して」
女性は抵抗するが、男性は力づくで女性を引き下ろした
「なんで死なせてくれないんですか!」

「す、すいません」
男性は神妙な顔で謝る
 言葉は続かなかった

女性は涙を流す

空に、硝煙の匂い漂う

「話、しませんか?」
やっと継いだ言葉は、先ほどと同じだった

女性のすすり泣きく声が
 花火を見終えて帰路につく人のざわめきと混じる

夏の夜だった

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