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自殺紳士

第2章 Vol.2:理由のない命

【理由のない命】

45歳になって、急に死にたくなった。

正確に言えば、生きていたくなくなった。

昨日、私は会社に行った。
 今日も、行った。
あと2日行くと、休日が2日在って、
 その後、また、会社に行く。

会社の仕事ではうまくいかないこともある。
 思うように評価されないこともある。
 でも、それで死にたいわけじゃない。

家族もいる。子どももいる。
 ただ、私が帰らなくても、この子達は生きていく。
 たとえ、私が死んだとしても、
  生命保険やらなんやらで、お金も入るようだ。

そう考えると、急に生きていることの必要性がわからなくなった。
 命が大事だというのなら、
  私以外の命を大事にすればいいだろう。
 家族が悲しむとしても、
  今ですら、私は家族とほぼほぼ会話をしていない。
  いなくなって、どれほどの影響があるのか。
 会社に迷惑はかかるかもしれないが、
  辞めてしまえるところだし、
  また、新しい人を雇えばいい。

生きている必要がない、という魅惑的な考えは
 私の中である日を境に大きくなってきた。

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