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自殺紳士

第8章 Vol.8:檻の家

気がつくと、
私は警察官に保護されていた
夜中に
公園で叫んでいたということで
通報されたらしい

警察官は不思議と私の事情を知っていた
私は話した覚えがないのに、

もっと不思議だったのは
警察官も私から聞いたわけではないというのだ

誰から聞いたのか分からないが、
知っていたということだった

警察官が色々行政的な手続きを取ってくれた
 私はシェルターに住むことになって
 子供たちもすぐに保護された
そして、
夫には、裁判所から接近停止命令が下った
あっという間に時間が流れ、
正直、その時のことはよく覚えていない

そして今・・・

私の目の前で子どもたちは楽しそうに遊んでいる
明日、私は仕事に行く
子供を保育園に送って
仕事から帰ったら迎えに行って

そして、家に帰る

帰れる家がある
帰っていい家がある

さあ、子どもたちを連れて、家に帰ろう
子どもを連れ立って歩く

ふと、黒いスーツの青年とすれ違う
青年は子どもたちを見て微笑んだようだった

子どもが好きなのだろうか・・・?

なぜだか、その青年を見たとき、
 私は、泣き出したくなっていた

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