
自殺紳士
第11章 Vol.11:いらない人
☆☆☆
ここはどこ?
薄っすらと目を開いた私は
見知らぬ天井を見ていた
白い天井
格子のような模様
カーテンが見えた
次にわかったのは、私が寝ているのが
硬いベッドの上ということだった
シーツもゴワゴワとしている
それで、ここが自分の家ではないことに気がついた
誰もいない・・・
それは私にとってはとても親密な感覚だった
家に帰っても、誰もいない
職場にいても、誰も私に話しかけない
職場では「事務員さん」
街では「お客さん」
私は話をするけど
ワタシは話をしていなかった
私は誰かと関わっているけど
誰もワタシを必要としていなかった
そうだよ、だって・・・
もう何百回も思い出される言葉
小さい頃
何歳の頃かは覚えていないけど
ワタシは母からこう言われた
『アナタなんて産まなきゃよかった』
『いらない子だ』
別に涙も出ない
悲しくもない
ただ、そのとおりだと
本当にそのとおりだったと思うだけだった
それは、空っぽのようで
寒々しい気持ちにワタシをさせた
「あの・・・」
突然男の人の声がした
え?
ワタシはベッドの脇に男の人が座っているのを見つけた
今まで誰もいなかった?
いや、居たのだろう
ワタシが気づかなかったのだった
黒い服、かろうじて黒ではない濃紺のネクタイ
晩夏とは言え、まだ暑い盛りだというのに
まるで葬儀屋のような姿の男性は
ワタシのことを心配そうに見つめていた
「あなたが私を助けてくれたの?」
「病院に連絡しただけです。助けてくれたのはお医者様です」
「どうして私の部屋に?」
ワタシは不思議に思って尋ねた
誰も、私の部屋に用事なんてあるわけ無いからだった
聞きながら、ワタシは、何か妙な期待をしている自分に気がついた
「あなたが、死のうとしていたからです」
ここはどこ?
薄っすらと目を開いた私は
見知らぬ天井を見ていた
白い天井
格子のような模様
カーテンが見えた
次にわかったのは、私が寝ているのが
硬いベッドの上ということだった
シーツもゴワゴワとしている
それで、ここが自分の家ではないことに気がついた
誰もいない・・・
それは私にとってはとても親密な感覚だった
家に帰っても、誰もいない
職場にいても、誰も私に話しかけない
職場では「事務員さん」
街では「お客さん」
私は話をするけど
ワタシは話をしていなかった
私は誰かと関わっているけど
誰もワタシを必要としていなかった
そうだよ、だって・・・
もう何百回も思い出される言葉
小さい頃
何歳の頃かは覚えていないけど
ワタシは母からこう言われた
『アナタなんて産まなきゃよかった』
『いらない子だ』
別に涙も出ない
悲しくもない
ただ、そのとおりだと
本当にそのとおりだったと思うだけだった
それは、空っぽのようで
寒々しい気持ちにワタシをさせた
「あの・・・」
突然男の人の声がした
え?
ワタシはベッドの脇に男の人が座っているのを見つけた
今まで誰もいなかった?
いや、居たのだろう
ワタシが気づかなかったのだった
黒い服、かろうじて黒ではない濃紺のネクタイ
晩夏とは言え、まだ暑い盛りだというのに
まるで葬儀屋のような姿の男性は
ワタシのことを心配そうに見つめていた
「あなたが私を助けてくれたの?」
「病院に連絡しただけです。助けてくれたのはお医者様です」
「どうして私の部屋に?」
ワタシは不思議に思って尋ねた
誰も、私の部屋に用事なんてあるわけ無いからだった
聞きながら、ワタシは、何か妙な期待をしている自分に気がついた
「あなたが、死のうとしていたからです」
