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自殺紳士
第12章 Vol.12:宵闇を歩く
「あの・・・」
突然声がした
驚いてあたりを見回す
俺が歩いてきた方の道から
男性がひとり現れた
黒いスーツ
かろうじて黒ではない濃紺のネクタイを締めた
20代そこそこの男性だった
俺は反射的に手に持っていた紐を隠した
「死ぬ・・・つもりでしたよね?」
男性はおずおずと尋ねる
どうやら見られてしまったらしい
こんな人気のない森
男性の格好も相当不似合いだが
こっちも会社帰りでほとんど同じような格好だ
不自然なことこの上なかった
男性は俺のことを見つめていた
なんと答えていいかわからなかった
しばらく時間が立って
やっと一言 言えた
「帰る、場所がないんだよ・・・」
久しぶりに、人に話した
そしたら、
堰を切ったように
言葉が溢れて
苦しさが溢れて
黒々とした水を
吐き出すように
いつしか俺は嗚咽していた
弱い・・・情けない
辛い
苦しい・・・
そして・・・
「もう・・・消えてしまいたい・・・」
誰かの前で涙を流したのは、一体何年
・・・何十年ぶりだろう
突然声がした
驚いてあたりを見回す
俺が歩いてきた方の道から
男性がひとり現れた
黒いスーツ
かろうじて黒ではない濃紺のネクタイを締めた
20代そこそこの男性だった
俺は反射的に手に持っていた紐を隠した
「死ぬ・・・つもりでしたよね?」
男性はおずおずと尋ねる
どうやら見られてしまったらしい
こんな人気のない森
男性の格好も相当不似合いだが
こっちも会社帰りでほとんど同じような格好だ
不自然なことこの上なかった
男性は俺のことを見つめていた
なんと答えていいかわからなかった
しばらく時間が立って
やっと一言 言えた
「帰る、場所がないんだよ・・・」
久しぶりに、人に話した
そしたら、
堰を切ったように
言葉が溢れて
苦しさが溢れて
黒々とした水を
吐き出すように
いつしか俺は嗚咽していた
弱い・・・情けない
辛い
苦しい・・・
そして・・・
「もう・・・消えてしまいたい・・・」
誰かの前で涙を流したのは、一体何年
・・・何十年ぶりだろう
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