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自殺紳士

第2章 Vol.2:理由のない命

 ボクはずっと旅をしています。
 神様は、ボクに特別な力を一つだけしかくれませんでした。
 「死のうとする人がわかる力」
 です。
 
 なんとか、話しかけて、死ぬのを思いとどまってもらいます。
 そうすれば、いつか、ボクは天の世界に行かれると思うんです。

私はあっけにとられてしまった。
男の話は荒唐無稽だった。でも、不思議と病気という感じではなかった。

男の話が本当なら、私が死のうとしたことを知っていたこと、
話しかけはしたが、途方にくれている理由もわかるというものだった。

「なんか、私の身の上話をして、死ぬのをやめてもらうのは、ちょっとずるい気もするんですけどね」

男は笑った。
男と私は終焉の駅を降り、何もない田園地帯を当てもなく歩き続けた。

「今度はあなたの番ですよ。
 なんで死のうとしたんですか?何か、手伝えることはありますか?」

男は私に手を差し伸べた。

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