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Lの劣情

第1章 2024年6月吉日…

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「なんかいきなり急にみっきに近づけた感じがしたから嬉しかったわ」
 そしてそう囁きながら、更にギュッと手を握ってきた。

 わたしは急にドキドキと昂ぶりを感じてしまう…
 だってその手が熱くなっていたから。

 そしてそう囁きながらわたしを見つめてくるアイ先輩の目が…

 瞳が…

 濡れていたから…

「………っ」
 そんなアイ先輩の濡れた目を見た瞬間にわたしは…

 ドキドキドキドキドキドキ…

 ズキズキズキズキズキズキ…

 と、わたし自身の奥深くのオンナという、いや、メスの昂ぶりがじわりと滲み出し、疼き始めてきた。

 そして突然脳裏に、あの16年前のある一つのシーンが浮かび上がってきたのである。

 それは…

 わたし自身のバスケプレイヤー時代の最高潮なピークであり、再起不能のケガをしてしまった最後の大会である
『春の関東大学トーナメント』
 の決勝リーグ前夜。

 この前夜がわたしの21歳の誕生日であったのだが、決勝リーグ前夜でもあり、一人静かに黙っていたのだが…
『みっきお誕生日おめでとう』
 と、アイ先輩が突然わたしの寮の部屋を訪れてくれてプレゼントを渡してくれたのであった。

『お祝いはさぁ、大会終わってからしようね』
 と、アイ先輩がそう囁きながら突然わたしを軽く抱き締め…
 そして…

『あ……』
 本当にそれは一瞬の出来事であり、ホントに軽いタッチの…
 フレンチキスであった。

『じゃ明日ね、頑張ろうね』
 そしてアイ先輩はそう囁きながらサッと部屋を出ていった、だけどわたしは次の日の試合で再起不能の大怪我をし、その傷心の想いのままにバスケ部を退部し、そのままアイ先輩とも接点を失くしてしまったのだった……

 ……突然、そんなあの時の一瞬の出来事が、まるでフラッシュバックかの様に脳裏に浮かんだのである。

 そしてその情景は、今、目の前にいて、わたしを濡れた目で見つめてきているアイ先輩の瞳により連想されてきたのだ…

「あまりにもさぁ、突然のあの大怪我だったし、酷い結果になっちゃったからさぁ…」
 するとおそらくはアイ先輩の想いにもあの誕生日の夜のシーンが浮かび上がったのだろうか…
 更にわたしの手をギュッと強く握り、そう囁いてきたのである。

 そのアイ先輩の重ねてきた手は更に熱く…

 そして静かに小さく震えていた…



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