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Lの劣情

第1章 2024年6月吉日…

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 その重ねてきた手は熱く、そして静かに小さく震えていた…

 今夜のわたしは披露宴パーティーの帰りのままのシルク調の黒い大きく肩周りの開いたノースリーブの膝丈のワンピースに薄い紫のショールを羽織っており、カウンターに座り膝に置いた手にアイ先輩の熱い想いの伝わる手が重ねられ、それが小さく震えてきたから…
 穿いているストッキングのナイロン繊維とシルク調のスカートの裏地の布地がその微妙に震える手の振動により、わたしの変態的なストッキングラブという性感を昂ぶらせ、そして滲み出てきている淫靡なメスをより疼かせてきた。

「…っ」
 多分、見つめ返すわたしの目もそんな淫靡な昂ぶりの想いに濡れていたのであろう…

「みっき…」
 そう小さく囁き更にギュッと手を握り、いや、引っ張り…

「へ、部屋に帰ろうか…」
 そう囁いた。

「……」
 わたしは黙って頷きその導きに従うかの様にカウンター席を立ち、彼女に手を引かれ、後ろを付いて歩いていく。

 そして部屋へ向かうエレベーターに乗るなり…

「……っん、あっ」
 アイ先輩はわたしをグイッと抱き寄せ、後ろから抱き締めてきたのだ。

 アイ先輩は180cm、わたしは166cm…

 その身長差は、まるで男性に抱き締められているかの様な錯覚を感じさせてくる。

 だが、いや、ただ違うのは…
 背中越しに感じるアイ先輩の女性特有の柔らかさと…
 甘い香りのフレグランス。

「……………」
 そしてわたしは、いや、わたし達はそのまま黙ってエレベーターに乗る。

 30階のバーから15階に降りていく僅かなエレベーターの降下時間なのではあるが…
 このわたしにはすごく長い時間に感じられた。

 そしておそらくは抱き締めてくれているアイ先輩にとってもこのエレベーターの降下時間は、彼女自身の約16年という空白の時間を埋めるに等しい時間でもあったのではないだろうか……

 チン…

 エレベーター到着のベル音が、わたし達の静かな沈黙を破る…

 いやおそらくは、アイ先輩の心のカベを壊す、壊れた音だったのかもしれない…


「…っん、あ、アイ先輩…」

「みっき………」

 なぜならば…

 エレベーターのドアが開くなり、彼女はグイッとわたしを引き寄せ…

 キスをしてきたから…

 そう…

 甘く、柔らかな、熱いキスを…
 



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