
Injured Heart
第8章 友人
【Best friend】
「浅井?」
自席で本を読んでいる同級生ー浅井裕司ーに
雪一は思わず怪訝そうに声をかけてしまった
浅井は明るい男だった
人の良いところをよく見るやつで
陰のようなものを感じさせなかった
もちろん普通に落ちむことはあるし
テストの出来が悪ければ傷つきもした
(そういうときには、雪一でなくてもわかるほど傷ついている)
顔に似合わず、文学が好きで
よく小説を読んでいた
おそらく気持ちが健全とは
この男のようなやつを言うのだろうと思う
雪一が気楽に付き合える人間の一人だった
今日も表面的には変わらない
何事もない顔をしている
なのに
胸が裂けて
鮮血を滴らせていた
昨日まではなかった傷だ
雪一はしばらく言葉を失った
次の日も、酷くはならなかったが
血が止まることはなかった
その次の日も
金曜日の夕方、浅井は一人教室にいた
委員の仕事があったのだ
雪一は浅井を待っていた
待っていたけれど
なんと言っていいのかわからなかった
浅井がそこまで傷ついているのは
知る限りでは初めてだった
「どうした、高村」
「いや、なんとなく、帰りそびれた」
「なんだそりゃ。じゃあ、一緒に帰るか」
いつもと変わらない
「たまらんな、委員の仕事。来ないやつもいるんだぜ」
「大変だな」
「まあ、大したことはないよ」
歩きながら、何分ぐらい話しただろう
「なあ、高村」
ふと、声のトーンが下がる
「いや、なんでもねえ。じゃあな」
手を振って、駅の改札に消えた
雪一は
ただそこに立ち尽くした
「浅井?」
自席で本を読んでいる同級生ー浅井裕司ーに
雪一は思わず怪訝そうに声をかけてしまった
浅井は明るい男だった
人の良いところをよく見るやつで
陰のようなものを感じさせなかった
もちろん普通に落ちむことはあるし
テストの出来が悪ければ傷つきもした
(そういうときには、雪一でなくてもわかるほど傷ついている)
顔に似合わず、文学が好きで
よく小説を読んでいた
おそらく気持ちが健全とは
この男のようなやつを言うのだろうと思う
雪一が気楽に付き合える人間の一人だった
今日も表面的には変わらない
何事もない顔をしている
なのに
胸が裂けて
鮮血を滴らせていた
昨日まではなかった傷だ
雪一はしばらく言葉を失った
次の日も、酷くはならなかったが
血が止まることはなかった
その次の日も
金曜日の夕方、浅井は一人教室にいた
委員の仕事があったのだ
雪一は浅井を待っていた
待っていたけれど
なんと言っていいのかわからなかった
浅井がそこまで傷ついているのは
知る限りでは初めてだった
「どうした、高村」
「いや、なんとなく、帰りそびれた」
「なんだそりゃ。じゃあ、一緒に帰るか」
いつもと変わらない
「たまらんな、委員の仕事。来ないやつもいるんだぜ」
「大変だな」
「まあ、大したことはないよ」
歩きながら、何分ぐらい話しただろう
「なあ、高村」
ふと、声のトーンが下がる
「いや、なんでもねえ。じゃあな」
手を振って、駅の改札に消えた
雪一は
ただそこに立ち尽くした
