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Injured Heart

第7章 見えない刃

その日の帰り、
玄関で、高村くんに会った。

さっきのことが、どうしても偶然とは思えなくて
私はちょっとだけ周囲見回して、人がいないのを確認して
彼に言った。

「ありがとう・・・」

何が?と言われるかと思ったけれども、高村くんは、私の顔を見て、
それから、胸のあたりを見て

少しだけ目を細めた。
それは、笑っているようにも、悲しそうにも見える
不思議な表情だった。

「別のところ」

彼が口を開く。

「え?」

「別のところで食べなよ。ご飯」

そう言って、司書室が意外と穴場だと教えてくれた。
司書の先生と、本の話をしながら食べられるって

図書委員の特権かと思っていたけれど
そんなことない、って

「じゃあね」

ふらっと手を振って、高村くんは行ってしまった。

初めて話したけれど、
とても、不思議な男の子、だった。

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