
Injured Heart
第11章 お願い
【Her wish】
「高村くんに、お願いがあるんだけど」
笹沼はるかはいつにない真面目な顔で雪一に言った。
「私の弟を助けてほしいの」
9月、虫の声が響く宵
雪一が委員会の仕事で遅くなっていたにも関わらず、
はるかは校門でまっていたのだ
「弟が、学校に行きたくないって。
何か悩んでいるようなの。
でも、私にはわからないの。」
「それをなぜ僕に?」
勢いに押されて、それまで黙っていた雪一だったが、
やっと声をだすことができた
「だって、高村くんは優しいから」
この子はボクの力を知らない
なのに、なぜ、ボクなんだ?
優しいって?
「弟は思い詰めているみたいなの
死んでしまうかもしれないの
とにかく来て」
はるかは雪一の手を取って走り出した
雪一はその手を振り払うこともできずにはるかについていくことになる。
はるかの家は学校から近かった
(だからこそ、こんなことができたのだが)
雪一の言葉を聞くより前にはるかは雪一を家に押し入れた
観念して雪一は靴を脱ぐと
居間に上がる
そこに、小学校高学年くらいの男の子がいた
雪一は目を見張り立ち尽くした
「ひどい」
思わす言葉が溢れる
眼球は片方抜け落ち
耳は削がれ、
頭髪も左半分はズルリと剥けていた
肩から胸にかけて幾重にも刺し傷のような痕が見られた
腕や足は比較的無傷だが
細かな裂傷が無数に見える
口元からも血が流れている
「お願い。弟を助けて」
雪一は後ずさった
「ボクは、医者じゃない…」
はるかは涙を浮かべて雪一を見つめている。
雪一はため息を付いて、『弟』に向き直った
「君…笹沼くん…」
「ヨウスケよ」
「ヨウスケくん…その傷は?」
「傷?」
はるかが声を上げる
ヨウスケは黙っていた。
無理もない。喋れるのかすら疑問だ
微かにヨウスケの唇が動いた
「何?ヨウスケ?!何処かに傷があるの?誰かに何かされたの?」
雪一は迫ろうとするはるかを制した
「多分、今は何も話せないよ。学校に行くのも無理だと思う。
横にして
食べられるなら、食べさせて」
「高村くんに、お願いがあるんだけど」
笹沼はるかはいつにない真面目な顔で雪一に言った。
「私の弟を助けてほしいの」
9月、虫の声が響く宵
雪一が委員会の仕事で遅くなっていたにも関わらず、
はるかは校門でまっていたのだ
「弟が、学校に行きたくないって。
何か悩んでいるようなの。
でも、私にはわからないの。」
「それをなぜ僕に?」
勢いに押されて、それまで黙っていた雪一だったが、
やっと声をだすことができた
「だって、高村くんは優しいから」
この子はボクの力を知らない
なのに、なぜ、ボクなんだ?
優しいって?
「弟は思い詰めているみたいなの
死んでしまうかもしれないの
とにかく来て」
はるかは雪一の手を取って走り出した
雪一はその手を振り払うこともできずにはるかについていくことになる。
はるかの家は学校から近かった
(だからこそ、こんなことができたのだが)
雪一の言葉を聞くより前にはるかは雪一を家に押し入れた
観念して雪一は靴を脱ぐと
居間に上がる
そこに、小学校高学年くらいの男の子がいた
雪一は目を見張り立ち尽くした
「ひどい」
思わす言葉が溢れる
眼球は片方抜け落ち
耳は削がれ、
頭髪も左半分はズルリと剥けていた
肩から胸にかけて幾重にも刺し傷のような痕が見られた
腕や足は比較的無傷だが
細かな裂傷が無数に見える
口元からも血が流れている
「お願い。弟を助けて」
雪一は後ずさった
「ボクは、医者じゃない…」
はるかは涙を浮かべて雪一を見つめている。
雪一はため息を付いて、『弟』に向き直った
「君…笹沼くん…」
「ヨウスケよ」
「ヨウスケくん…その傷は?」
「傷?」
はるかが声を上げる
ヨウスケは黙っていた。
無理もない。喋れるのかすら疑問だ
微かにヨウスケの唇が動いた
「何?ヨウスケ?!何処かに傷があるの?誰かに何かされたの?」
雪一は迫ろうとするはるかを制した
「多分、今は何も話せないよ。学校に行くのも無理だと思う。
横にして
食べられるなら、食べさせて」
