
Injured Heart
第3章 そういう人
物心ついたときには
人の心の傷が視えていたと思う
全くそれが普通で
この世界の人はみな傷ついて視えていた
この力は ―力なんてよべるものかどうかも分からないが―
この力は 読心術ではない
その人が何を考えているかは分からない
ただ 傷ついた様子が身体の傷のように視えるだけ
どこでついた傷か分からない
何でつけられた傷かも分からない
この力は 癒しの力ではない
視えるだけで何も出来ない
医者じゃない人間が、傷ついた人に何も出来ないように
僕はただ立ち尽くすことしかできない
いつ治るのかも分からない
どうすれば治るのかも分からない
だから、僕はこれを誰にも言っていない
言っても信じてもらえないから
歩いていれば
世界は 傷ついた人ばかり
そして僕が思うに
人から傷つけられるよりも
自分を傷つけている人の方が
ずっと多い
そういう人を見ていると
悲しくなるので
僕は
手を伸ばして振り上げたナイフを取り上げたくなる
それは多分、特別優しいことじゃない
高村雪一は、そういう人だった
人の心の傷が視えていたと思う
全くそれが普通で
この世界の人はみな傷ついて視えていた
この力は ―力なんてよべるものかどうかも分からないが―
この力は 読心術ではない
その人が何を考えているかは分からない
ただ 傷ついた様子が身体の傷のように視えるだけ
どこでついた傷か分からない
何でつけられた傷かも分からない
この力は 癒しの力ではない
視えるだけで何も出来ない
医者じゃない人間が、傷ついた人に何も出来ないように
僕はただ立ち尽くすことしかできない
いつ治るのかも分からない
どうすれば治るのかも分からない
だから、僕はこれを誰にも言っていない
言っても信じてもらえないから
歩いていれば
世界は 傷ついた人ばかり
そして僕が思うに
人から傷つけられるよりも
自分を傷つけている人の方が
ずっと多い
そういう人を見ていると
悲しくなるので
僕は
手を伸ばして振り上げたナイフを取り上げたくなる
それは多分、特別優しいことじゃない
高村雪一は、そういう人だった
