テキストサイズ

スメンクカーラー

第1章 街工房の少年、ナクト


女王はナクトの顔を眺めていたが彼の足元が裸足であることに気が付いた


「……こんなサンダルも履いていない少年が?
 腕の良い職人だと言うのか、ホルン?」


え?とホルンも息子が裸足であったことに慌てた


「……いや、これはさっき帰り道で鼻緒が…」


とナクトが言い訳し始めたがすぐに背後の女に再び押さえつけられてしまった


「な、なんだよッ!喋るなって言うんだったら話しかけてくるなよッ!痛ぇんだよお前!」


「メリト、それくらいで許してやれ
 ホルン、彼が仕上げた物をみせてくれ
 彼の腕前を確認したい」


ホルンはすぐさま駆け出し隣の部屋から先月仕上げたばかりのカノプス壺を持って戻って来た


「あ、それはちょっと…」

と口を挟みかけたが隣に立つ女兵の気迫に負けて黙り込んでしまった


“あれはお遊びで仕上げたやつじゃないか!
 親父のやつ、よりによってド派手なやつを選んじゃったな!”


青いラピスラズリと白いアラバスター鉱石をふんだんに使われたカノプス壺は非常に豪華であった


ナクトは誰かの依頼で作ったわけではなく、注文を受ける際に高額な依頼になるようなサンプルを作っていた


女王はじぃっとカノプス壺を眺め、ほう?と感嘆の声をあげた


「なかなかおもしろい仕上がりだ
 ホルン、お前の目も節穴ではないな
 決めた!
 私のための調度品を彼に作らせろ」


「え!?」

「はぁ??」


工房の親子は非常に驚き、配下の男たちはやれやれと言ったふうに天を見上げてため息をついた


ナクトを捉えていた女兵士メリトは彼に害がないと悟って彼の脇をすり抜けて女王の前に立って彼女を守るように立ち尽くした


“なんだ、この怪力女も若い小娘じゃねーか?”


側近である近衛兵ではなく私設の護衛までもが若いメンバーで集められていることが意外とだった


メンバーの中でいちばん年長者であろう神官の男がホルンと打ち合わせを始めたのでナクトは手持ち無沙汰のまま女王と護衛のメリトに晒されていた……


ストーリーメニュー

TOPTOPへ