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サム・チェイシング・アフター 18頁完結

第1章 シグナル


「こんど基地で一般公開のフェスティバルがあるのよ?ミゲルも来ない?
 隊の中を案内してあげるわよ!」


憧れのラクエラからの誘いを断ることなんて出来ない


彼は友人から小綺麗なおとなっぽいジャケットを借りて基地へ出向いた


基地はサマーカーニバルのような賑わいで、戦車の空砲イベントや航空機のアクロバティック飛行、そしてモビルスーツのコックピットシート試乗体験なども執り行われていた


迎えに来てくれたラクエラは士官の制服と制帽をバッチリ決め込んでおり、ミゲルは見惚れてしまった


「どう?格好いいでしょう?惚れちゃうんじゃない?」
と笑っているラクエラは本当に大人っぽく、学生である自分がとても子供っぽく思えて悲しくなった


それでも一生懸命あかるい後輩を演じてラクエラが気まずくなったりしないよう努めた


フードコートでチキンを頬張っていると3人組のパイロットスーツを着た兵士が現れた


「やぁ、ラクエラ!あいかわらず綺麗だな?
 オレの誘いを断っておいて別の男とデートか?オレに見せつけてるのかッ!?」


「私に付きまとわないで頂戴、サム!
 アンタにはちゃんとした彼女が居るでしょう?アナタが声をかけてくるたびに遠くから彼女さんが睨みつけてくるのがわかるのよ!
 そのままアナタにじゃなく私に女同士の言い争いが始まってしまうのよ?わからない?
 もう、話しかけないでッ!

 行きましょう、ミゲルッ!」


珍しくラクエラが声を荒らげてそのまま立ち上がった
ミゲルはとりあえず彼に会釈をして、彼女の後を追った


賑やかな場所を離れて展望台のような見晴らしの良いところで遠くを眺めていた


彼女は何も言わず、ただ黙って遠くのほうを見ている

イライラしていることくらいミゲルにだってわかる


やがて深いため息をついたあと、ラクエラは隣に佇んでくれているミゲルの髪の毛をグシャグシャと崩してやった


「ごめんね、ミゲル」

きっと付きまとわれている嫌な雰囲気のことを言っているのだろうけど、わざとミゲルは
「ボクはくせっ毛だから大丈夫てすよ」

と髪の毛のほうの話題に切り替えてあげた


ラクエラもふふふっと笑ってくれた


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