テキストサイズ

サム・チェイシング・アフター 18頁完結

第1章 シグナル


「あそこでモビルスーツのコックピットシートに座れるのよ?乗ってみない?」


ラクエラはテントの向こうに数機のモビルスーツが立っているところを指さした


ミゲルはまたあのパイロットたちに出くわすのではないかと心配したが、さっさと彼女は階段を降りていってしまった


午前中は近所のキンダーガーデンの子供たちで大行列になっていたが、昼過ぎにはもう列は短くなっている


そして彼らの姿はなかった


イベントの受け付けをしていた迷彩服の女性兵が列に並んでいるラクエラを見つけて声をかけてきた


「あら、ラクエラ? そっちは…弟さん?」

と言われてラクエラは苦笑した


「ボーイフレンドを招待したのよッ!
 さぁ、次は私たちの番よッ!」


「もう私は乗ったり降りたりするの疲れちゃったわ!ラクエラ、アンタがやりなさいよ?
 事務方でも簡単なモビルスーツの研修ぐらい受けたでしょう?」


そう言われたラクエラは「いいの?」とばかりにテンションが上がっていた


立ち上がったモビルスーツの高さは約18m

胴体の高さにあるコックピットまでは10mくらいだろうか?


コックピットから開いたハッチから1本のロープが垂れてきており、手元のスイッチと足を引っ掛ける小さなステップ台が伸びていた


「どうやるんだったっけ?」
ラクエラは研修を思い出しながらロープを掴む

「ほら、ミゲル!私に抱き着いてきて!
 しっかりつかまってないと落っこちるわよ?
 ビルの3階くらいから落ちたらタダじゃ済まないわよッ!?」


ミゲルは言われたままラクエラの身体にしがみつく


スルスルと上昇すると、さすがに怖くなってさらに抱きつくようになってしまった


「ほら、ついたわよ?タラップのほうに乗り移って? 風にあおられないでね?」


モビルスーツのコックピット


中を覗き込んでいるとラクエラは彼を押しのけてシートに座り込んだ


「ほら、私の膝の上に乗って!
 いいから、いいから!」


言われるがまま子供のようにラクエラの膝の上にゆっくりと腰掛ける


「わぁっ」


いくつかのモニターは何かしらのゲージを示していたが、周囲の景色を映し出す全天候モニターはオフになっていた


開けっ放しのハッチからは空しか見えない


誰からも見られることのない死角のような雰囲気だった


ストーリーメニュー

TOPTOPへ