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サム・チェイシング・アフター 18頁完結

第1章 シグナル


「……さっきはありがとうね、ミゲル」


ラクエラはとても小さな声でミゲルの耳元に囁いた


あまりに小さな声だったので思わずミゲルは
「えっ?」と聞き返そうと顔を後ろに向ける


顔と顔が近い


あ!と思ったとき


ラクエラのほうから彼の唇に自分の唇を重ねてきた 

驚いたミゲルだったが、このまま時間が止まって欲しいと願った



ようやくロープ伝いに降りてきたふたり


受付役の女性兵は顔を真っ赤にしているミゲルを見て「ははん?」と見据えたあとラクエラの背中をバァンッ!と思いっきり叩いてやった


そのあともブラブラとイベントを見て回っていたが、ふたりはいつからか手を握ったまま歩き回りイベントを楽しんでいた



何周も見て回ったものだからさすがに終わりの時間が近付いてきた

飲食ブースのテントはすでに撤収が始まっている


ふたりは植樹が並ぶ歩道の脇に立ち止まり、話し込んでいると再びパイロットスーツの3人組の声が聞こえてきた


こちらに向かってくるようだが、まだ姿は見えない


ラクエラは咄嗟に隠れようと植樹のほうへ後ずさりする


だが、ミゲルはこのとき限り勇気を振り絞った


「えっ?」
とラクエラの発した唇にキスをして塞いでしまったのだ


やがて3人組はラクエラとミゲラに気が付いたのだが、すでにちょっかいを出せる雰囲気も失せてしまった


サムと呼ばれた男は「チッ!」と舌打ちをしてそのまま歩道を歩き去ってしまった


彼らが通り過ぎてもミゲルは離れず、ラクエラのほうからも彼の首の後ろに両手をまわしていた





こうしてふたりは交際をすることになり、
基地内でも他の男がちょっかいをだすこともなくなったのだった


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