
サム・チェイシング・アフター 18頁完結
第1章 シグナル
そのあとどうなったのか、ミゲルにも記憶がない
何があったのか、宴の後からの記憶がすべて亡くなってしまっていた
軍医が言うには脳が自身の身体を守るためにすべての神経を遮断したのだろう、と語っていた
ミゲルは独房に入れられたあと、精神鑑定を受けたものの異常が認められず特別監獄へ送られたあと、他の辺境の基地へ送られた
それは使い捨ての兵士のように切り捨てられる酷い戦地だった
戦っているあいだ、彼は凄まじい能力を発揮し前線で活躍した
こうして実績を少しづつ重ねたミゲルは特殊部隊インフェルノ・チームの一員となっていた
かつての悲惨な戦地でも、生き残りは彼一人だった事は何度でもあった
隊長機の爆発を見て
「さて、どうしたものか?」
案外ミゲルは冷静だった
武器は少ないものの、最後の撤収用にとナパーム弾を残していた
すべてを焼き尽くす猛烈な焼夷弾
彼は崖の下に敵軍が集まってくる、と想定して崖の上から狙撃できるようカモフラージュしていく
周りの木々をへし折り、折り重ねていき、
モビルスーツをその下に潜らせ撃ち込む体勢のまま、時を待った
手持ちのナパームは2つ
2時間ほどでモニターには無数のシグナルが集まってきた
もちろん隊長機が大破したあたりを取り囲んでいる
ジャングルに視界を封じられているため、それらがモビルスーツなのか生身のゲリラ部隊なのかはわからない
だが兵器を携えているであろうシグナルが無数に点滅していた
頃合いだ
ミゲルが一発のナパーム弾を放つと、まるで隕石でも落ちてきたかのような大爆発が起こった!
中心地は蒸発し、周囲の木々は爆風で吹き飛んでいく
あっという間にあたりは真っ黒い煙が立ち込める地獄のような光景になっていた
シグナルは消えている
そのほとんどは人間ごと蒸発したであろう
焼かれたことにすら気づいていなかったかもしれない
あまりの爆発でモニターもブラックアウトの点滅を繰り返していたが、徐々に正常表示に戻っていった
ピコン ピコン!
見るとひとつだけシグナルが灯っている
表示を見ると「SAM Machine」と表示されている
「……サム???」
言葉を口にした途端、
ミゲルの記憶が一瞬で蘇ってきた!
絶叫して、あたりに吐き散らした
