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サム・チェイシング・アフター 18頁完結

第1章 シグナル


彼は比較的最近チームに加わってきたため、誰とも話そうとせず、ただ黙々とナイフを磨いたり銃をいじっていたりしてなかったか?


そうだ、確か彼が配属されたのは局地兵器の実験をするためだった

通常、小隊や中隊の中でもモビルスーツ2機や3機で組み合わせて編成行動をとるものだ

だが新入りの彼は誰ともペアを組まず、新兵器の運用を試していた


AIで自動制御された戦車バギーで
陽動をかけながら敵地に乗り込む試験をするためにチームと同行していた筈だ


無人機の遠隔操作と自動制御システムで
自分の機体を追尾してくるテストパイロットでなかったか?


そう、彼はどことなくエリートのような落ち着きを見せていて、ゲスなオレたちとは明らかに距離をとっていた


オレたちが現地の村を襲っていたときも、村の女をレイプしていたときも、ヤツは加わらずに外に居た


アイツは泥まみれになって地べたを這いずりまわるオレたちのような兵士ではなく、新開発に携わっているような冷めた人間のようだった!!


皮肉なことにあの時女を襲っていたバリラーリが今や女を守っている


彼は人格が変わってしまった


敵地での潜伏生活で完全に頭が壊れてしまっているのだ

彼もこのインフェルノ部隊に加わってなければ、このような密林の中で抑圧された時間を過ごさなくても済んだのに


“サム…、可哀想なやつ、もうお前は元には戻れないだろう…

 いっそのことオレが楽にしてやったほうが…”


そう考え事をしながら走っていると横で女の悲鳴が聞こえた!

「キャアアアア・ア・ア・ア・ア・ッッ!?」


いつの間にか追いついてきていたサムが少女の背中にナイフを振り下ろしていた


少女は転げ周り、サムも勢い余って倒れ込んでいた

だが彼の手には大きなナタのようなコンバットナイフが握られている


「やめろ、サムッ! この子を殺すなッ!」


バリラーリは目の前に平手を突き出し、彼を制しようとする


だが彼は立ち上がると再び少女に斬りつけてきたのだ

メッタ刺しにされる少女は頭を守りながら悲鳴すら上げられない


バリラーリは彼の振り上げた腕をがっしと掴むとそのまま怒りのあまり容赦なくボキボキと捻じ曲げてしまっていた!





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