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ふたりは似てる

第4章 猛暑

ダラダラと長い商談がようやく終わった

雅也は地下鉄のホームに降りた
まったく、担当者レベルで話はついてるのに。。。と正直思うのだが、こちらからは言えない
独立前は業界大手の営業であちこち飛び回っていた
結婚して独立して5年ほど
今のところ、企業してから順調だと言えるのでそう文句は言えない

それには、義母の瑞穂の存在が大きい
義母はなかなかの野心家だ、妻の美沙も義母ほどではないが性格的には似てるところがある

野心のある人間はいい、付き合いやすい、と雅也は思っている
反対に義父の辰夫のような温厚で人当たりのよい人間は読み切れなくて苦手だった




ー雅也君、お疲れさん


後から辰夫に声を掛けられた


ー珍しいですね、お義父さん

ーちょっと衛生士さんが明日から産休だっていうんでお茶をしてきたよ

ー育休ですか。。。


タイミングが悪いな、と雅也は思った

最近、孫はまだかとやたら瑞穂がいう
美沙はそれに反応して機嫌が悪い
美沙自身は子供をそんなに欲しいとも思ってないようなので余計に苛つくのか
ふたりになったときまで不機嫌そうだ


ー育児が落ち着いたら戻って貰わないとね。。。彼女がいないとね。。。僕が困るんだなあ
よく気が利く子が抜けるといろいろ大変なんだよ

辰夫がため息をつく

ー長くいる方なんですね、ひよっとして幾島さん?

ーそうそう、幾島さん
雅也君、知ってたね、あの子、3人目なんだよ
上の子が双子で、仕事して、更にもうひとり
偉いよなあ、あの小さい体でよく頑張るよ

ーパワフルですねぇ。。。女性はすごいな


独身だった頃の幾島しか知らない雅也は驚いた
辰夫は愉快そうに笑ったあと、静かに言った

ー雅也くん、君たちは焦らなくてもいいよ
瑞穂が煩く言うのも、まあそのうち諦めるだろうから。。。

ーすみません、お義父さん。。。


何故か雅也は辰夫に申し訳ない気持ちになった




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