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蜜会…春の揺れ

第1章 春の揺れ

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「○○病院まで…」
 わたしはホテルを出て、タクシーに乗る。
 
 朔の月の下…
 桜の花びらが、風に流されていた。

 ブブ…
 すると夫から、再びLINEが着き…
『とりあえず落ち着いたから、帰宅する』

「あ、運転手さん、変更………へ向かって…」
 行き先を変え、閑静な住宅街の自宅へと向かう。

 バタン…
 宵闇に、タクシーのドアの閉まる音が、やけに響いて聞こえた。

 そして、玄関を開け…
「……ただいま………」
 静かにリビングに入る。

「……………」

「あ、あの、す、すいませ…ん……でした……」

 リビングに座り、帰宅したわたしをチラと一瞥してくる夫に…
 そう小さく、謝りの言葉を告げる。

「……遅かったな………」
 夫は…
 間もなく真上を指すリビングの時計に目を向け、そう、言った。

「あ…、あの…久々だったんで……盛り上がっちゃって……
 で、電話に、気付かなかった…の………」

「……そうか………」

「はい……」

「………………」

「あ、あの、お、お義母様は……」

「うん……軽い心筋梗塞らしい………」

「えっ、し、心筋梗塞…」

「幸い発見が早かったから、大事にはならなかったみたいだ…」

「あ…」

「ただ、1ヶ月は入院らしい……」

「い、1ヶ月……」

「…………」

 夫は、眼鏡の元を押さえ、冷たく感じる目を向けてくる…

「そうだったな…
 久しぶりの同窓会だもんな………」

「あ、いや、はい……ご、ごめんなさい…」

「いや、間が…悪かっただけさ………」
 眼鏡の奥で一度だけ瞬きをし、そのまま視線を外さなかった…
 その目は冷たく、声音は落ち着いてた。

 確かに………間が悪かった。

 それも…

「……………」

 あ…

 そして、その刺すような視線が、左指に向いた気がして…

「そう…間が悪かった……だけさ…………」

 その声音からは、全てを見透かされたみたいで、一瞬、息が詰まり…

 無意識に…
 左手を握り閉め、後ろへと隠してしまう。

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