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蜜会…春の揺れ

第1章 春の揺れ

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 ブー、ブー、ブー…………

 バッグの中で、三度目の着信が震えていた。
 
「……………」

 そして彼は、出ないわたしを黙って見つめ…
 何も言わずに立ち上がり、そのままトイレへ向かった。

 まだ、触れたくはない…
 今夜の全てが夢幻の如くに消えてしまいそうだから…

 ブー……ブ、ブ………………

 震えが止まり…
 
 ブブ…

「あ…」

 LINEの通知…

「………………」

 この通知に胸騒ぎを感じ、わたしはおそるおそる、スマホを手に取る…

『母が倒れた…』
 スマホ画面に浮かぶ、そのLINEの表示。

 指先が止まり、画面を見つめる…

『母が倒れた、○○病院』

 それは同居の義母。

 そのLINEの短い通知に…
 
 夢のような、甘い夜が消えていく…

「…ん、どうした?」

 戻った彼が後ろから覗き、声を掛けてきた…

「え、あ…ううん………」

「いや、ううんじゃないだろう……」
 彼はわたしの目を読み、そう優しく言ってくれる。

「……う、うん………」
 
 騒めきと、揺らぎ…
 躊躇する想い…

 それは今朝…
 指輪と一緒に捨ててきたはず。

「さぁ、大丈夫だから……」
 
「あ……え、う、うん………」

「さぁ………」
 
「うぅ………」

 涙が溢れてくる…

「ぅ、ぅぅ………」

「また………」

 彼はそう呟き…
 名刺を取り出し、握らせてくれる…

 裏には、手書きの携帯番号が見えた。

「え……あ…い、いいの………」

「あぁ、もちろんさ…」

 囁く目の優しさが、揺らぐ心を優しく包み…

「さ、急がないと……な」

 そっと背中を押してくれる。

「ま、またな……」

「え、あ……」

「待ってるから……」

 一夜の夢は、散らなかった…

 まだ、つぼみのままに……
 

 

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