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蜜会…春の揺れ

第1章 春の揺れ

 4

 ガチャ―――
 浴室ドアの開く音が、やけに大きく響いた。

「あっ」

 振り向く間もなく…
「……………」
 夫がスッと身体を寄せてきた。
 
 抱いてくるわけでもなく…

「…………」

 黙って… 
 触れるか、触れないかの、微妙な背中の隙間。

 そして…

「……………」

 張り詰める空気… 
 夫の吐息。

 あ…

 わたしは、その夫の所作に硬直し、目だけを鏡に動かすと…

「…………」

「……っ…」

 鏡に映る夫と目が合った。

 その目が…

「……………」

 鏡の中のわたしをゆっくりと見つめてくる。

「……………」

 胸の高鳴り…

 夫の視線が、重ったわたしの目から動き…

 胸元からゆっくりと下がり… 

「………っ…」
 腰の紐で止まった。

 横を向き… 
 左手を、死角に動かす。

「ぁ…………」
 夫の指先が…
 
 結び目をスッと撫で…

「ふぅん……」

 そして…

「ぁっ………」
 
 指先が、結び目の片紐に触れ…

 なぞり…
 
 つまみ…

「…………」
 その瞬間、わたしは夫の手を掴んだ。

「…………」

 夫は、鏡の中のわたしを見つめ…
 
「……まだ……寝ないのか………」
 小さく呟く。

「ぁ………し、シャワーを…………」
 声を振り絞り…

「そうか…」
 すると夫は、スッと離れ…

「……先に寝る……」

 バタン――――
 浴室から出て行った。

「…っ…ぁぁ…………」

 わたしは壁に寄り掛かり…

 息を漏らし…

 高鳴る胸を左手で押さえ…

 右手で結び目に触れ…

 鏡に映る、自分の姿を見つめていく。

 あ……

 そこに映っているのは…

「ぁぁ………」
 
 それは…

 いいわけのしようのない…

 オトコを誘う…

 妖しい下着姿のわたしがいた。


『先に寝る…』

 そしてその声が…

 心を揺らがせてくる…

 

 

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