テキストサイズ

蜜会…春の揺れ

第1章 春の揺れ

 5

  わたしは髪にドライヤーを当てながら、鏡を見つめ…

 さっきのは…
 さっきの夫のあの目は…

『先に寝る…』
 それは、5年振りに聞いた言葉。

 まさか…
 今さら…
 揺らぎ、騒めく。

 そして…
 逃げたい………

「ふぅぅ…」
 だから、ゆっくりシャワーを浴びた…
 もう寝ているはず。

 カチャ――
 静かに寝室のドアを開け、滑るように、ベッドへ潜り込む。

 夫は…
「…………」
 いつもの様に、壁を向いて寝ていた。

 そして、寝息も…

「ふぅ…」
 広がる安堵に小さく吐息を漏らし…
 背中を向け、目を閉じる。

「………っ…」

 尻に手の感触が…

「……………」
 撫でてくる手…

「…な…んだ……」
 小さく呟き…

「ぁっ…」
 寝返りを打ち、後ろから抱いてきた。

 あっ…
 そして同時に、5年振りの熱い昂ぶりが…
 
「…………」
 熱い吐息…

「ぇ…ぃ…ぁ……」
 後ろから、まさぐってくる…
 わたしには、逃げ場がなかった。

「…なんだぁ……」

 再びの呟き…
 まさぐる手が、腰に触れ…

「ヒモ…じゃ…ないんだ……」
 小さく、低く、呟く。

「ぇ…ぁ……」
 その呟きは、わたしの心を抉る言葉…

「ぁ……ぃ、ぃ…………ゃ…」
 わたしの小さな抗いに……

「せっかく……母さんがいない…んだから……」

「ぇ……」

「母さんが…いない……んだから……」

「ぁ……」

 その言葉…
 時間が、巻き戻る。

 あの頃…

 6年前に義父が亡くなり、義母が独りとなってから…
 その視線が気になって…
 気配を気にするあの夜から…
 距離が開き、触れられなくなった。

 すべてが…
 そこから、開きが生まれた。

『せっかく……』
 それは義母の入院…

「ぁぁ、そ、それは………」

「せっかく……」

「あ、明日……は、早い…んじゃ……」

「いや…あ、アレを…見たから……」

「あ、ぁ……」
 夫の昂ぶりは、治まりそうもない。

「あ、い…ん……ゃ………」

「ひ、紐…を…さぁ………」
 そう小さく叫び…
 まさぐり、指先を忍ばせてきた。

「んっ、や……ぁぁ………」

 わたしは、抗う……

「…せっかく……ようやく……だから………」

 今夜は…

 今夜だけは…

 触れられたくはなかった……


ストーリーメニュー

TOPTOPへ