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春のほどけ…戻れない距離

第2章 「卯月」―揺れと否定

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「本当に、昨日の二人は可愛いかったねぇ…」

「あ…う、うん…そうね……」

「なんか弥生、元気ない?」

「え…そ、そんなこと……」

 そんなことないとは、言えなかった…

「やっぱりさぁ、こんな午前中じゃイヤかなぁ?」

「ううん……」

「でもさぁ、子供達が学校に行ってる時間しかさぁ…」

「…………」

「そう簡単に、夜には出掛けられないしぃ…」

「…………」

「それに少しでもね、弥生といたいからね…」

「わ、わたしも…めいと…少しでも一緒に…」

「え、ホント、うれしいっ」

 めいが、胸元に顔を埋めてくる…

「んん、や、やよいぃ……」

「ね、ねぇ…で、でもね、めい……」

 そして、わたしはめいの耳たぶを撫でる…

「んん……」

 わたしの指に、めいは小さく震え、濡れた目を向けてくる…

「でも…あ、あのさ…こ、この、ベッドでってのもさぁ……
 な、なんとなくさぁ……」

「え?」
 
「あ、いや、ほら、このベッドはさぁ……」

 さすがに、昨日の…

 本当の、話しは言えない。

「え、あ、それ?」

「あ、うん、ほら、なんか、少し気になっちゃってさぁ……
 夫婦のベッドなわけだしさぁ………」

「あぁ、それね?」

「え?」

 わたしは、そのめいの、軽い返しに、戸惑いを感じる…

「えぇ、でも、そんな、気にすることないわよぉ…」

 そして、この明るさに…

「で、でもさぁ…」

「ううん、平気よ、だって、旦那は…隣の部屋で寝てるんだからさぁ……」

「えっ?」

 それって……

「ほら、わたし、産んだら、痛くなっちゃってって言ったわよねぇ」

「う、うん…」

「その頃からかなぁ、なんか、少し、ぎくしゃくしちゃってね…
 ま、いわゆる、寝室別居って感じなの…」
 めいは、明るく、あっけらかんと言ってきた。

「え………べ、別……なの………」

「うん、そう、別々……
 もう、一年以上になるかなぁ……」

「……ぁ……そう……なんだ………」

「うん、だからそんなこと気にしないでいいのよ…」

「さすがに、わたしだってさぁ…
 一緒に、寝てたらさぁ…………………」

 わたしには…
 そこの先の声は、聞こえなかった。

 ただ、怖かった……

 そして…

 思わず、部屋を見回してしまう―――
 

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