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クラスの人気者は、刹那の2時間を買い戻したい。

第4章 じゃあ、買ってよ

オレには過去の記憶がない。

なにに夢中になって、好きな音楽も、誰かに恋をしたのかも、子どもの頃の思い出も、両親のことさえもなにも覚えていなかった。

「……オレにはなりたいモノがない」

「それは……」

「センセはどうして先生になろうと思ったの?」

「私は……両親も教諭で、小さい頃から当たり前のように先生になるって信じてた」

「親の意思を継ぐってやつか」

「そうね、ほかの道はなかった気がするわ」

「後悔してるの?」

「後悔はしてないわ。……ただ」

皐月は暗くなりはじめている外の景色に目をやった。

「無性にやるせなくなる時があるわ」

皐月は教師になって5年、真剣に、がむしゃらに向き合ってきた。

三年の担任も今回で二回目。
信頼されている証だと自分に言い聞かせている。

しかし、熱心にやるほど空回りして、精神的にすり減るのも事実。

今年は年明けに両親から見合いの話を持ちかけられ激怒した。

仕事に生きることも許されない。

家庭を持ち、子どもを期待されて続けられる仕事ではなかった。

「そんなにキツイなら、辞めればいいのに」

「なにも知らないくせに勝手なこと言わないで!」

「……センセも孤独なんだな」

刹那はタバコを咥え火をつけようとする。

「ここは禁煙よ」

「真面目だな」

刹那は立ち上がって、皐月の元へ近づき上半身を屈めて彼女の耳元で囁く

「オレが話聞いてやるよ。先生と生徒じゃなくてさ」

皐月は驚いた表情で刹那の顔を見ていた。

彼はイタズラっぽく笑っていた。

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皐月は迷って迷って、本能に従うとこに決めた。

初めて自分の意思で選んだ行動。

刹那に自宅マンションの住所を告げる。

彼女は車で帰宅して彼を待つ。

(ああ、やっぱり軽率だったわね)

後悔先立たず。30分後、インターフォンが鳴り響いた。

初めて男の人を自宅に招き入れた。

制服姿の刹那。

「お邪魔しまーす」

ズカズカと部屋に入ってくる。

「煙草吸ってもいい?」

「ベランダで」

彼はカバンからコンビニ袋を取り出し、中から缶ビールを二つ掴み取り一つを投げ渡した。

「貴方、制服姿でお酒買ったの?」

「身分証明書見せたよ」

プルトップを開けて、ビールを飲む刹那。

ベランダに出て煙草を吸い始める。

完全に大人の男の仕草だった。

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