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中毒の処方箋 〜淫らな輪舞曲〜

第10章 飽食の時。瑠花(3)

瑞希は長い睫毛を伏せながら、僕の胸の中で囁いた。

「先生って、たまに職場でボーっとして宙を見つめていることあるでしょ。何か心ここにあらずみたいな顔で。そのこと、忘年会で聞いたとき、私には悩みを伝えてくれましたよね……瑠花には言ってないことなんだけどって前提で」

「瑞希ちゃんには話せるって感じたからね」

「なぜ、私には……って思ったんですか?」

「自分でも良く分からない……けど、家庭の事、子供の事、自分の将来の事。そういう諸々の悩みは瑞希ちゃんじゃないと理解してもらえないって思った。あのとき、瑞希ちゃんに言って、スッキリしたのは事実だよ」

「なぜ、瑠花には言えないんでしょうか……これって私の勝手な推測なんですけど……瑠花は先生から見ると眩しい存在だからじゃないですか?」

「そうだね……自分の弱い部分とか、心の闇の部分とかは瑠花には話さない、というよりも話せないんだ」

「そうだと思いました。私は瑠花を見ると、いつも自分の汚さを意識してしまいます。瑠花は真っすぐで、純粋すぎるんです。だから、先生の悩みは、心に傷のある私だからこそ、わかるような気がしています」

瑞希が潤んだ瞳で私を見つめるとき、私の心は二重に揺れていた。

「瑞希に僕の全部を見せたい」という切実な願いと、
「瑠花に嫌われるかもしれない」という思いが同時に存在していた。

「瑠花が手の届かない場所に、私だったら手が届くと思います……先生の悩みを包み込めると思う……」

瑞希は目を逸らさず、僕の目を真っすぐに見つめていた。

瑞希は私の手を掴み、自らの胸へと強く押し当てた。ドクドクと早鐘のような速さで彼女の心臓は鼓動している。

「私、年上の男性への憧れがあるんです。だから、先生に触れられていたい……そうすることで、私の過去の傷が癒されていく気がします。」

続けて、
「先生……私のこと、何でもズケズケ言う生意気な女だと思ってるでしょ?でも、照れ臭いんです……そうしとかないと。先生……改めて言います。先生のこと、好きです」

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