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君の体温は義務だった

第2章 通知

翌朝。

目覚ましが鳴る少し前に目が覚めた。

カーテンの隙間から、うっすらと朝の光が差し込んでいる。
今日は晴れだ。

天気予報アプリを確認してから、スマホをベッドの上に伏せた。

8月9日。
12日の「抱擁の日」まで、あと3日。

◇◇◇

出社すると、12階の開発フロアにはすでに何人かの社員が出勤していた。

「おはようございます、悠木さん。」
「おはよ。」

声を掛けてきたのは、後輩の佐伯だった。
どうやら俺より少し早く出社していたらしい。

「今日、早いね。」
「昨日ちょっと早く寝たので。」
「えらい。」
「子どもじゃないんですから。」
「そうだった。」

佐伯が可笑しそうに笑う。

自分のデスクへ向かおうとすると――

「あの、悠木さん。」
「ん?」
「昨日のログ、もう一回見てもらってもいいですか?」
「いいよ。」

佐伯のデスクへ移動し、モニターを覗き込む。
昨日から引き続き追っているデータログのようだ。

「ここです。」

佐伯が画面の一箇所を指差す。

「この時間帯だけ、感情推定の値が不自然に跳ね上がってるんです。」
「……ああ。」

画面上のログを少し過去まで遡ってみる。

「これ、AIの推定アルゴリズム側の問題じゃないね。」
「え?」
「昨日の夜のシステム更新で、タイムゾーンの設定が一部切り替わってる。データの取得時刻と、サーバー側の処理時刻にズレが生じてるんだと思う。」
「……ほんとだ。」

佐伯が身を乗り出すように画面へ顔を近づけた。

「じゃあ、こっちのタイムスタンプを修正すれば。」
「うん。たぶん正常値に戻る。」
「ありがとうございます!」
「まだ直ってないけど。」
「でも、原因が一瞬で分かったので。」

佐伯は心底ほっとしたように笑った。

「本当に助かりました。」
「いえいえ。」

自分の席へ戻る。
さっきの処理手順を頭の片隅で整理しながら、PCの電源を入れた。

午前中に片付けるべきタスクが、デスクの上にまだいくつか残っている。

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