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君の体温は義務だった

第3章 体温

朝。

目が覚めて、スマホを見る。

まだ早い時間だ。
二度寝するほど眠くもない。

昨日は珍しく、よく眠れた気がする。

……いや。
正確には、眠れたことよりも。

夢を見なかった。

そのことの方が珍しかった。

「……なんでだ。」

思わず独り言が漏れる。

昨日の出来事が、じわじわと脳裏に蘇ってくる。

HUG+。
ハグステーション。
名前も知らない男。
そして、彼が流した涙。

「……。」

そこまで考えて、思考を強制終了させた。
朝から何を考えているんだ、俺は。

ベッドの上でスマホを置く。

今日は牧野と出かける予定がある。
そろそろ準備をして家を出ないと遅刻する。

◇◇◇

待ち合わせ場所に着くと、牧野はすでに到着していた。

「おせーぞ。」
「五分前だけど。」
「俺は十五分前に着いてんだよ。」
「はいはい、着くのがお早いことで。」

二人で並んで歩き出す。

昼飯を食べ、適当にショップを見て回る。
くだらない雑談をして、どうでもいいことで笑う。

いつも通りの、ありふれた休日のはずだった。

けれど、しばらく歩いていると、牧野が横からジト目でこちらを覗き込んできた。

「……なあ。」
「ん?」
「お前、今日なんか変。」
「何が。」
「なんか知らんけど、絶対変。」
「分析が雑すぎるだろ。」
「いや、マジで言ってる。」

牧野が立ち止まり、じっと俺の顔を検分するように見つめてくる。

「昨日、なんかあったな?」
「……。」

一瞬、足が止まりそうになるのを必死で耐えた。

「別に。」
「その間(ま)。」
「何。」
「今の絶対怪しい間だったぞ。」
「何もないって。」
「ふーん。……そういえば昨日、ハグの日だったろ。」
「……うん。」
「どうだった?」
「普通。」
「普通ねぇ。」
「ただ十秒抱きしめるだけだしな。」
「まあ、そうだけど。」

牧野はそれ以上追求せず、再び前を向いて歩き出した。
だが、しばらくして思い出したように口を開く。

「相手の性別は?」
「男。」
「名前は?」
「知らない。」
「そりゃそうか。」

牧野が可笑しそうに笑う。

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