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君の体温は義務だった

第3章 体温

「じゃあ、雰囲気はどんな奴だった?」
「……。」

昨日のあの場所での出来事を思い返す。

最初は少し緊張していた。
身体に余計な力が入っていて、どこか怯えるように警戒しているようにも見えた。

でも——。

「……なんか、綺麗な感じだった。」
「へえ。」

牧野が意外そうな顔をして横目で見つめてくる。

「綺麗な感じ?」
「うん。」
「何それ。」
「知らない。」
「顔が綺麗だったってこと?」
「……たぶん。」
「たぶん?」
「なんか、顔だけじゃなくて全体的に。」

自分で口にしておきながら、何を言っているのかよく分からなくなってくる。

「……まあ、綺麗だったんだよ。」
「ふーん。」

牧野はニヤニヤしながら、意味深な相槌を打っていた。

「ずいぶん覚えてんな。」
「顔くらい覚えてるだろ。」
「へえ。」
「何だよ。」
「別に?」

牧野はニヤニヤしながら前を向く。

「続き聞こうかなと思って。」
「……何の?」
「ふふん。」

嫌な予感しかしない。

牧野は少し考えるように黙り込んだ。
それから、何でもない雑談の延長みたいに軽く尋ねてくる。

「……相手とは、ちゃんとハグできた?」
「できたよ。最初はちょっと緊張してたけど。」
「へえ。」
「でも、まあ……」

そこで不意に言葉が詰まる。

牧野が次の言葉をじっと待っている。

「……なんか。」
「うん。」
「泣いちゃってさ、相手。」

ポツリと、勝手に言葉が漏れ出ていた。
口にしてから、しまったと後悔する。

「泣いたんだ。」
「……うん。」
「なんで?」
「分かんない。」
「分かんないの?」
「本人も分かってなかった。」
「へえ。」

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