
君の体温は義務だった
第3章 体温
◇◇◇
「おはようございます。」
「おはよ。」
いつものように開発フロアのドアをくぐり、自分のデスクへ向かう。
「……。」
隣の席の牧野が顔を上げた。
じっと数秒、俺の顔を見つめてくる。
「……何だよ。」
「いや。」
牧野が不審そうに眉をひそめた。
「お前、今日マジでどうしたの?」
「何が。」
「なんでそんなに機嫌いいわけ?」
「普通だけど。」
「普通じゃねぇよ。」
「そうか?」
「そう。」
椅子をくるりと回し、牧野がじろじろと俺の顔を観察してくる。
「なんかあったろ。」
「別に。」
「出た。またその『別に』」
「本当に何もないって。」
「ふーん……。」
牧野はまだ納得いかない顔で俺を見つめている。
「じゃあ、その顔は何?」
「どんな顔だよ。」
「めちゃくちゃニヤニヤしてる。」
「してない。」
「してるって。」
「……。」
思わず手で口元を覆うと、牧野が待ってましたとばかりに吹き出した。
「ほら! やっぱり!」
「……うるさい。」
「何なんだよ今日のお前! 土曜は死んだ魚みたいな目してたくせに。」
「失礼だな。」
「今日は魚が生き返ってるぞ。」
「例えが雑すぎるだろ。」
爆笑する牧野を横目に、俺はPCの電源を入れた。
モニターが明るくなり、見慣れたデスクトップが表示される。
話そうかとも一瞬思ったが、やっぱりやめた。
駅で再会して、笑い合えた。ただそれだけだ。
そんなことをバカ正直に話したら、今度こそ何を言われるか分からない。
「……本当に何もないから。」
「はいはい、絶対怪しいけどな。」
牧野はまだニヤニヤしながら自分の作業に戻っていった。
いつもの仕事。いつもの朝。
それなのに、さっきすれ違った時の笑顔がどうしても頭から離れない。
……困ったな。
気を引き締めて仕事に集中しようと、キーボードに手を置いた。
けれど数分後、暗転したモニターに映り込んだ自分の顔を見て、絶句した。
やっぱり、また口元が緩んでいる。
「……。」
どうしちゃったんだ、俺。
本当に。
「おはようございます。」
「おはよ。」
いつものように開発フロアのドアをくぐり、自分のデスクへ向かう。
「……。」
隣の席の牧野が顔を上げた。
じっと数秒、俺の顔を見つめてくる。
「……何だよ。」
「いや。」
牧野が不審そうに眉をひそめた。
「お前、今日マジでどうしたの?」
「何が。」
「なんでそんなに機嫌いいわけ?」
「普通だけど。」
「普通じゃねぇよ。」
「そうか?」
「そう。」
椅子をくるりと回し、牧野がじろじろと俺の顔を観察してくる。
「なんかあったろ。」
「別に。」
「出た。またその『別に』」
「本当に何もないって。」
「ふーん……。」
牧野はまだ納得いかない顔で俺を見つめている。
「じゃあ、その顔は何?」
「どんな顔だよ。」
「めちゃくちゃニヤニヤしてる。」
「してない。」
「してるって。」
「……。」
思わず手で口元を覆うと、牧野が待ってましたとばかりに吹き出した。
「ほら! やっぱり!」
「……うるさい。」
「何なんだよ今日のお前! 土曜は死んだ魚みたいな目してたくせに。」
「失礼だな。」
「今日は魚が生き返ってるぞ。」
「例えが雑すぎるだろ。」
爆笑する牧野を横目に、俺はPCの電源を入れた。
モニターが明るくなり、見慣れたデスクトップが表示される。
話そうかとも一瞬思ったが、やっぱりやめた。
駅で再会して、笑い合えた。ただそれだけだ。
そんなことをバカ正直に話したら、今度こそ何を言われるか分からない。
「……本当に何もないから。」
「はいはい、絶対怪しいけどな。」
牧野はまだニヤニヤしながら自分の作業に戻っていった。
いつもの仕事。いつもの朝。
それなのに、さっきすれ違った時の笑顔がどうしても頭から離れない。
……困ったな。
気を引き締めて仕事に集中しようと、キーボードに手を置いた。
けれど数分後、暗転したモニターに映り込んだ自分の顔を見て、絶句した。
やっぱり、また口元が緩んでいる。
「……。」
どうしちゃったんだ、俺。
本当に。

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