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君の体温は義務だった

第2章 通知

会社に着く頃、靴はまだかろうじて生きていたけれど、さすがに不快感がある。
長靴は格好悪いとか言っていないで、そろそろ諦めて買った方がいいかもしれない。

せめて、普通の靴に見えるような、おしゃれなやつを。

エントランスの自動ドアが開く。

社員証を端末にタッチすると、小さな電子音が鳴った。

エレベーターに乗り込み、十二階へ。

ドアが開くと、壁一面の大型モニターに今日の稼働状況が映し出されていた。



HUG+ Network Status

全国接続率 99.998%

マッチングサーバー 正常

ハグステーション稼働率 95.558%



インジケーターは全部緑。
平和そのものだ。

エラーが発生すると、この画面は容赦なく真っ赤に染まって俺たちエンジニアを呼び出す。
できることなら、あまり見たくない景色だ。

「ウッス。」

聞き慣れた声に振り返る。

「ウッス、牧野。」

カフェオレを片手に手を上げてきた牧野の薬指には、見慣れた指輪が光っていた。

そういえば、あいつが結婚してもう一年か。
月初めにHUG+の通知で一喜一憂する生活とも、とっくにおさらばしているわけだ。

少し羨ましい。
……いや、だいぶ羨ましいかもしれない。

「今月はいつだって?」
「十二日の十九時。」
「第一希望?」
「らしい。」
「へえ、珍しいな。」

牧野は感心したように頷いた。

「俺なんか結婚前、第三希望ばっかだったわ。」
「今回はたまたま運が良かっただけだろ。」
「日頃の行いが良いってか?」
「お前はすぐそうやって……。」

まあ正直、第一希望で通ったからといって特別嬉しいわけでもない。
義務として行くことに変わりはないのだから。

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