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君の体温は義務だった

第2章 通知

「悠木くん。」
「はい。」
「先月話していた感情推定モデルの誤差検証、進んでる?」
「あと少しです。今週中には提出します。」
「期待してます。」

短いやり取りだった。

でも部長は、人の名前をちゃんと呼ぶ。

そういう人だ。

朝会は十分ほどで終わった。

「じゃ、解散。」

一斉に椅子が引かれる音。

俺も席へ戻ろうとしてーー

「陽。」

牧野が横から小さく声を掛けてきた。

「今日さ、昼メシ行かね?」
「いいけど。」
「ちょっと相談。」

相談。

その一言だけで、何となく仕事じゃない気がした。


♢♢♢


昼休み。
社員食堂は今日もそこそこの混雑を見せていた。
ざわめきを抜けて窓際の席をなんとか確保し、トレーを置く。

「いただきます。」
「いただきます。」

俺が味噌汁を一口すすったところで、向かいの牧野が箸を置いた。

「そういやさ。」
「ん?」
「相談……っていうか、報告。」

何だその急に改まった言い方は。

「子どもできた。」

思わず箸が止まる。

「……マジで?」
「うん。」

牧野は少し照れくさそうに頭をかいた。

「まだ安定期じゃないから、会社にはもう少し先で言おうと思ってんだけど。」
「そういうことか。」

自然と口元がほころんだ。

「おめでとう、牧野。」
「ありがと。」

その一言だけだったが、牧野は本当に嬉しそうな顔をした。
何というか……見てるこちらまで温かい気持ちになってくる。

「いやぁ……俺が父親かぁ。」
「まだあんまり実感ないだろ。」
「全然。まったく。」

ふたりで軽く笑い合う。

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