
君の体温は義務だった
第2章 通知
しばらく無言で箸を動かす。
食堂は相変わらず賑やかだ。
誰かの笑い声と食器の触れ合う音が、絶え間なく耳に入ってくる。
「……午後も頑張るか。」
牧野が味噌汁を飲み干して立ち上がった。
「そうだな。」
トレーを返却口へ戻し、俺たちは仕事場へ戻る。
午後もまた、数字と向き合う時間が始まる。
◇◇◇
気付けば、窓の外は茜色の夕焼けに変わっていた。
今日中のタスクは概ね片付いた。
PCを閉じ、リュックへしまう。
「あー、終わった終わった。」
牧野が大きく背伸びをした。
「帰るか。」
「おう。」
二人でエレベーターへ向かう。
ちょうど帰宅ラッシュの時間帯だ。
同じような社員証を首から下げた社員たちが、ぞろぞろとエレベーターホールへ集まってくる。
扉が閉まり、エレベーターがゆっくりと下降を始めた。
誰も喋らない。
聞こえるのは低い機械音と、時折誰かがスマホを操作する指のタップ音だけだ。
俺もぼんやりと、減っていく表示階の数字を眺めていた。
一階に着き、人の流れに押し出されるように外へ出る。
「陽もさ。」
「ん?」
「誰か作れば?」
「……何を。」
「彼女でも、彼氏でも。」
牧野が笑いながら肩をすくめた。
「お前、背も高いし、顔もまあまあ良いじゃん。探せばすぐできるだろ。」
「まあまあって何だよ。」
「そこ気にすんの?」
「気にするだろ。」
「じゃあ、結構良い。」
「適当だな。」
「でも実際、困らんだろ。お前なら。」
「何が。」
「相手探すの。」
「……ああ。」
結婚するか、あるいは生活共同パートナーとして正式に登録すれば、HUG+の抱擁義務は免除される。
確かに、その方が圧倒的に楽だ。
月一とはいえ、わざわざ指定された日時に時間を取られるのは面倒だしな。
「それにさ。」
牧野が俺の顔を覗き込んできた。
「お前、最近また寝不足だろ。」
「……そう?」
「目。」
「目?」
「死んでる。」
「失礼だな。」
「いや、元からちょっと眠そうな目をしてるけど。」
「フォローになってない。」
牧野が可笑しそうに笑う。
俺も小さく苦笑いを返した。
食堂は相変わらず賑やかだ。
誰かの笑い声と食器の触れ合う音が、絶え間なく耳に入ってくる。
「……午後も頑張るか。」
牧野が味噌汁を飲み干して立ち上がった。
「そうだな。」
トレーを返却口へ戻し、俺たちは仕事場へ戻る。
午後もまた、数字と向き合う時間が始まる。
◇◇◇
気付けば、窓の外は茜色の夕焼けに変わっていた。
今日中のタスクは概ね片付いた。
PCを閉じ、リュックへしまう。
「あー、終わった終わった。」
牧野が大きく背伸びをした。
「帰るか。」
「おう。」
二人でエレベーターへ向かう。
ちょうど帰宅ラッシュの時間帯だ。
同じような社員証を首から下げた社員たちが、ぞろぞろとエレベーターホールへ集まってくる。
扉が閉まり、エレベーターがゆっくりと下降を始めた。
誰も喋らない。
聞こえるのは低い機械音と、時折誰かがスマホを操作する指のタップ音だけだ。
俺もぼんやりと、減っていく表示階の数字を眺めていた。
一階に着き、人の流れに押し出されるように外へ出る。
「陽もさ。」
「ん?」
「誰か作れば?」
「……何を。」
「彼女でも、彼氏でも。」
牧野が笑いながら肩をすくめた。
「お前、背も高いし、顔もまあまあ良いじゃん。探せばすぐできるだろ。」
「まあまあって何だよ。」
「そこ気にすんの?」
「気にするだろ。」
「じゃあ、結構良い。」
「適当だな。」
「でも実際、困らんだろ。お前なら。」
「何が。」
「相手探すの。」
「……ああ。」
結婚するか、あるいは生活共同パートナーとして正式に登録すれば、HUG+の抱擁義務は免除される。
確かに、その方が圧倒的に楽だ。
月一とはいえ、わざわざ指定された日時に時間を取られるのは面倒だしな。
「それにさ。」
牧野が俺の顔を覗き込んできた。
「お前、最近また寝不足だろ。」
「……そう?」
「目。」
「目?」
「死んでる。」
「失礼だな。」
「いや、元からちょっと眠そうな目をしてるけど。」
「フォローになってない。」
牧野が可笑しそうに笑う。
俺も小さく苦笑いを返した。

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