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姉のような母のような黄色い花

第1章 夕陽の差す方角

 僕がいま寝ているパイプベッドも折り畳み式で、寝る時以外はいつも折りたたんで、壁に立てかけている。
「南西は……こっちかな。台所のほうね」
 美織は台所のほうを指さす。この部屋で唯一、窓のある方角だ。
 日当たり最悪の部屋だが、今日のように天気のいい夕暮れ時はその窓から西日がわずかに差し込んでくる。
「でも、うちに黄色いものなんてないよな」
 あるのはベッドと、本棚代わりに使っている黒のカラーボックス。テレビ台を置くスペースもないから、十四インチのブラウン管テレビはカラーボックスの上に載せている。
 ごはんを食べる時に使う折り畳み式の小さな丸テーブルは、空色だ。
 今の僕の仕事道具であるパソコンは、高校時代に五千円で買った黒のちゃぶ台の上にのっけてある。半年ほど前フリーライターとなった僕は毎日このちゃぶ台の前に座って、カチャカチャとキーボードを叩いて原稿を書いている。ちなみにちゃぶ台の下には、貧乏な僕の唯一の趣味といえる筋トレ用のダンベルが転がっている。これはプレートを付け替えられる可変式で、最大で片手三十キログラムの重量になる。
「そうね~。圭ちゃんの部屋に黄色はないよね」
 最近、週末はうちに泊まりに来ているとあって、美織もこの部屋にあるものは大体把握していた。
「まあ、いいや。風水なんて、おまじないみたいなもんだろ。そんなんで金が稼げるわけがない」
 本当にどうでもよかった。美織だって暇つぶしに別の部署から発行している占いの雑誌を持ってきただけである。ガチの占い好きの乙女ではない。
「そうかもしれないけどさ~」
 美織は占いの付録を地べたに並べたまま、〝よっこらしょ〟とオバサン臭いことを言って、立ち上がると、再びベッドに潜り込んできた。
 シトラス系のほのかに甘い香りが、僕の鼻腔をくすぐる。
 いつも美織がつけている香水の匂いだ。大人っぽくて、なんだか落ち着く匂いだ。肌もプニプニとしていて触り心地がいい。初めて美織の裸を見た時は、下腹が思ったよりも弛んでいて、おっぱいも垂れ気味で乳首の位置が下がっていることに正直、〝あぁ、オバサンだなぁ〟と思ってしまった。

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