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胡蝶の夢~私の最愛~⑪【夢路・ゆめじ】

第18章 秘密

「二人共に髪に白いものが混じっても、か?」
「はい、殿がおじじさまになり、私がおばばさまになっても」
 泉水が笑いながら応えると、泰雅も笑った。
「そうか」
 泰雅が小さく頷いた。
 二人は縁側に並んで座り、煌々と輝く丸い月をいつまでも眺めていた。
 静かな時間が二人をゆったりと包み込み、流れてゆく。言葉は要らない。ただ、互いが側にいれば、手を伸ばしてその温もりを感じられたら、それだけで十分だった。


 将軍家宗公は、その半月後、静かに息を引き取られた。あたかも眠るように安らかな最期であったという。
 将軍薨去に伴い、尾張大納言徳川光利卿が将軍職を継承。名を家利と改められ、第十代将軍に就任した。

(明日から第7話に入ります。
 作品説明にもあるように、ついに大ドンデン返しがあります★)

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