光の輪の中の天使~My Godness番外編~
第2章 流れた歳月
実里の胸を軽い衝撃が駆け抜けた。
悠理が既に結婚している―。
何故、その事実に自分が衝撃を受けなければいけないのかも判らず、実里は曖昧な表情でうなずいた。
「そうなの。ご結婚、おめでとうと言うべきよね」
「そいつ、若い頃に子宮の病気を患ったらしくて、丸ごと子宮を取ったんだ。だから、もう、子どもはできないんだって、それでも良いのかと結婚前に訊かれた」
何と応えて良いのか判らず、実里は黙って彼の話に耳を傾けるにとどめた。
悠理もまた実里に話すというよりは、一人ごとを語っているようにも見える。
「俺よりも八つ上で、どことなく早妃に似てるんだ。俺がこの町に来て最初に働いたのが港だったから、そこで知り合ってね。そう、顔かたちとかいうんじゃなくて、なんていうか、外見は儚げで脆そうなのに、内面に一本、芯がぴしりと通っているような、しっかりした女? そういう感じがもの凄く似てるんだ」
俺の惚れる女は皆、似たようなタイプばかりだ。早妃もあんたも、嫁さんも。
悠理がかすかな吐息と共に落としたひとことは、儚く潮風混じりの空気に溶けて散り、実里にまでは届かない。
「―ごめんなさい。今になって謝っても、本当にどうしようもないことだけど―」
実里の声が震えた。四年前、実里はこの男の妻を車で撥ねた。たとえ悠理の妻の方に過失があったとしても、実里が身重の女の生命を奪った罪は永遠に消えはしない。
悠理が眼をわずかに見開いた。
「別にあんたを責めるつもりで、こんな話をしたんじゃない。気にしないでくれ。今だから言えるが、四年前のあの事故は、あんただけに責任があったわけじゃない。早妃にも非があったんだ。あれは避けられない不幸な事故だった。四年前に柊も含めて俺の周囲の人間たちは皆、口をそろえて俺に言った。あのとき、俺はことごとくそれらに反撥したが、今なら、あいつらが言ったことは全部正真正銘の真実だったとはっきり判る。だから、あんたが責任をいつまでも感じる必要はない」
「私、あなたにそんな風に言ってもらえる資格はない―」
実里の眼に涙があふれた。
悠理が冗談めかして言った。
悠理が既に結婚している―。
何故、その事実に自分が衝撃を受けなければいけないのかも判らず、実里は曖昧な表情でうなずいた。
「そうなの。ご結婚、おめでとうと言うべきよね」
「そいつ、若い頃に子宮の病気を患ったらしくて、丸ごと子宮を取ったんだ。だから、もう、子どもはできないんだって、それでも良いのかと結婚前に訊かれた」
何と応えて良いのか判らず、実里は黙って彼の話に耳を傾けるにとどめた。
悠理もまた実里に話すというよりは、一人ごとを語っているようにも見える。
「俺よりも八つ上で、どことなく早妃に似てるんだ。俺がこの町に来て最初に働いたのが港だったから、そこで知り合ってね。そう、顔かたちとかいうんじゃなくて、なんていうか、外見は儚げで脆そうなのに、内面に一本、芯がぴしりと通っているような、しっかりした女? そういう感じがもの凄く似てるんだ」
俺の惚れる女は皆、似たようなタイプばかりだ。早妃もあんたも、嫁さんも。
悠理がかすかな吐息と共に落としたひとことは、儚く潮風混じりの空気に溶けて散り、実里にまでは届かない。
「―ごめんなさい。今になって謝っても、本当にどうしようもないことだけど―」
実里の声が震えた。四年前、実里はこの男の妻を車で撥ねた。たとえ悠理の妻の方に過失があったとしても、実里が身重の女の生命を奪った罪は永遠に消えはしない。
悠理が眼をわずかに見開いた。
「別にあんたを責めるつもりで、こんな話をしたんじゃない。気にしないでくれ。今だから言えるが、四年前のあの事故は、あんただけに責任があったわけじゃない。早妃にも非があったんだ。あれは避けられない不幸な事故だった。四年前に柊も含めて俺の周囲の人間たちは皆、口をそろえて俺に言った。あのとき、俺はことごとくそれらに反撥したが、今なら、あいつらが言ったことは全部正真正銘の真実だったとはっきり判る。だから、あんたが責任をいつまでも感じる必要はない」
「私、あなたにそんな風に言ってもらえる資格はない―」
実里の眼に涙があふれた。
悠理が冗談めかして言った。