光の輪の中の天使~My Godness番外編~
第2章 流れた歳月
しかし、彼女のささやかな疑問は悠理から発せられた予期せぬ問いのために、一瞬でかき消された。
「―幸せか?」
「え? ええ」
何故、この男が自分の幸せを気にするのか。どうも判らないことばかりだ。いや、彼にははっきりと伝えてはいないけれど、悠理は理乃が自分の娘だと知っているはずだ。だからこそ、今の実里の環境を気にするのだろう。実里の幸せは、その娘である理乃の幸せにも大いに影響することなのだ。そう考えてゆけば、悠理が実里の近況を気にかけるのも、理乃の父親だからゆえだと納得できる。
「幸せよ」
またも感情を必要以上ら込めないで言うと、悠理はうなずいた。
「だろうな。柊路は俺と違って、良い夫、父親になってくれてるはずだ。あいつはホストやってたときから、俺も含めて周りの大勢のホスト連中とは違ってたからな。あいつは今時、珍しいくらい良いヤツだよ。あんた、良い男を亭主にしたな、男を見る眼があるんだ」
「―」
実里にとって、悠理の存在は複雑きわまりない。悠理にとって実里は亡き妻をひき殺した加害者であり、また実里にとって彼ははレイプした男、その挙げ句に妊娠した子どもの父親だった。
そんな二人が今更出逢ったところで、何を話せば良いというのか。悠理に言わせれば、柊路は気を利かしたというが、実里にはかえって夫の気遣いとやらに感謝するべきなのか、恨めしく思うべきなのか判らない。
「また、できたんだ?」
単刀直入に問われ、最初は何のことか皆目判らなかった。しかし、悠理の視線が今度は自分の少し膨らんだお腹に注がれているのに気づき、ハッとした。
こんな男の前でと思いながらも、頬を赤らめてうなずく。
「柊の子だろ、なんて訊くまでもないよな」
これは実里にというより、独り言のようにも聞こえたので、実里は黙ってやり過ごした。
「あんたと柊はお似合いだよ。俺はあんたらが幸せなら、それで良い」
その〝あんたら〟というのが果たして誰と誰を指すのか、判らないままに実里は何か言おうとして口を動かした。
「―幸せか?」
「え? ええ」
何故、この男が自分の幸せを気にするのか。どうも判らないことばかりだ。いや、彼にははっきりと伝えてはいないけれど、悠理は理乃が自分の娘だと知っているはずだ。だからこそ、今の実里の環境を気にするのだろう。実里の幸せは、その娘である理乃の幸せにも大いに影響することなのだ。そう考えてゆけば、悠理が実里の近況を気にかけるのも、理乃の父親だからゆえだと納得できる。
「幸せよ」
またも感情を必要以上ら込めないで言うと、悠理はうなずいた。
「だろうな。柊路は俺と違って、良い夫、父親になってくれてるはずだ。あいつはホストやってたときから、俺も含めて周りの大勢のホスト連中とは違ってたからな。あいつは今時、珍しいくらい良いヤツだよ。あんた、良い男を亭主にしたな、男を見る眼があるんだ」
「―」
実里にとって、悠理の存在は複雑きわまりない。悠理にとって実里は亡き妻をひき殺した加害者であり、また実里にとって彼ははレイプした男、その挙げ句に妊娠した子どもの父親だった。
そんな二人が今更出逢ったところで、何を話せば良いというのか。悠理に言わせれば、柊路は気を利かしたというが、実里にはかえって夫の気遣いとやらに感謝するべきなのか、恨めしく思うべきなのか判らない。
「また、できたんだ?」
単刀直入に問われ、最初は何のことか皆目判らなかった。しかし、悠理の視線が今度は自分の少し膨らんだお腹に注がれているのに気づき、ハッとした。
こんな男の前でと思いながらも、頬を赤らめてうなずく。
「柊の子だろ、なんて訊くまでもないよな」
これは実里にというより、独り言のようにも聞こえたので、実里は黙ってやり過ごした。
「あんたと柊はお似合いだよ。俺はあんたらが幸せなら、それで良い」
その〝あんたら〟というのが果たして誰と誰を指すのか、判らないままに実里は何か言おうとして口を動かした。