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第5章 戌原西地区の殺し屋

 20代前半だろう容姿に不相応な遊具へ腰かけている人物の名前は朽無文芽(くちなしあやめ)といった。

 名前だけ見ればまるで女のようだが、れっきとした男である。

 少し長めの栗色を後ろで一つに束ねて白い手ぬぐいを頭に巻き、若干つり気味の目が特徴的だ。

 そこに黒のタンクトップとニッカズボンという服装が加われば、公園よりも土木工事現場の似合う青年の出来上がりである。

 しかし、彼はなにも本当に工事現場で働いているわけではない。

 朽無文芽の本職は殺し屋だ。

 人知れず人間を殺すという技術においては、似たような職種の人間がはびこっている戌原(いばら)西地区でもトップクラスの実力者だった。

 ――殺し屋の名前があやめだなんて、冗談にもならない。

 そう再開するたびに浮かべる感想を呟き、悠理は文芽へ口を開いた。

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