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第5章 戌原西地区の殺し屋
そんな悠理の様子に気づいたのか、文芽は「いやいや内面も好きだよもちろん、その呆れに呆れた視線とか大好き」とフォローになっているのかいないのかわからない言葉を口にした。
「でさー五年前の俺はユーリちゃんと会ったときに、これはもう将来的には俺の好みにしかならないと思ったんだ。だからそのときにきみと約束したんだけど、覚えてない?」
「……約束」
パッと思い浮かぶことがなく、悠理は小さく首をかしげる。
今の悠理にとっては大したことのない殺人現場だったが、当時の悠理にはその場で卒倒するほどの光景だったのだ。
思い出せるのは腹部を滅多刺しにされた男の死体と、一滴も返り血を浴びていないへらへらとした笑顔の文芽だけ。
何を言われたかなんて、覚えているはずがなかった。