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第8章 「俺だけだ」
千尋の父親は技術士だった。
毎日幼かった千尋には区別のつかない様々な機械を相手に、夜遅くまで研究と設計へ明け暮れていた。
まともに家へ帰ってこない父親に千尋は苦手意識を持っていたが、それでも『機械』というモノには僅かながら興味を持っていた。
自分の父親がこれほどまで傾倒するそれが、一体どれだけ面白いのか。
それを決して父親に聞くことはなかったが、小学生だった千尋は図書館を利用していろいろな本を読んだ。
父親の工具を持ち出して、ゴミ捨て場にあった時計や扇風機、電気スタンドなどを解体しては組み立ることを何度も繰り返した。
そんなことを中学二年生まで続けていた千尋は、すっかり父親と同じく機械をいじくることに楽しみを見出すようになっていた。
――千尋の両親が彼を見捨てるまでは。