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第8章 「俺だけだ」


 千尋が両親に捨てられた理由には、父親の借金が絡んでいた。

 千尋自身は知らなかったことだが、父親の行っていた研究には膨大な費用がかかっていたのだ。

 彼が中学二年生だったある日。

 学校から帰ってきた千尋の家には、父はもちろん母の姿も消えていた。

 机に残された手紙には借金取りから逃げるために、家族でばらばらになるしかなかったと書かれていた。

 それは千尋にはどうにも理解できない話だった。

 借金があるなら、それを解決する方法はいくらでもあるはずだ。

 自己破産なりなんなり、それに借金の収集で恐喝をしてはいけないことなんて小学生でも知っている。

 逃げるなんてことをせずに、警察署へ届ければいい。

 しかし、そんな千尋の考えを裏切るように、その日いつになっても両親は家に帰ってこなかった。

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